英文メール 3つのノウハウ これを知らないと相手に読んでもらえない

A person using a laptop: photo by Kaitlyn Baker

手紙や電話の時代は終わり、いまのビジネスの基本は英文メール。そのなかでも一番やっかいなのが、見も知らぬ相手に初めて書くメールです。せっかくメールを送ったのに、一向に返事が来ず困ったことはありませんか。
中身を読んでもらえず、3秒でゴミ箱行きになってしまったのでは?
お互い知ったどうしなら、ヘタな英語でも読んでもらえます。しかし初めての相手には、完成度の高いメールを書かないとダメ! 「変なメールだ」とポイされていたら、くやしいです。
新ビジネスの開拓には、初めての相手への英文メールは避けて通れません。相手に読み進んでもらえる英文メールを書くための、ビジネス現場で磨いたコツをまとめてみました。

入り口突破のための「お作法」

和文の世界では長々しいスタンダードがありましたね。
「拝啓 貴社ますますご盛栄のこととお慶び申し上げます。」
という、あれです。ふつう0.2秒で読み飛ばしますが、もしこう書いてあったらどうでしょう。
「前略 貴社ますますご健勝のこととお喜びいたします。」
悪意はまったくないけど、文章のご作法違反。この1行を見ただけで、送り手の会社と付き合うことに躊躇してしまいそうです。

英文メール冒頭のルール違反例

わたしが教える受講生の英文メール案。添削してほしいと書いてきてくれた冒頭の2行。ABC社の山田太郎さん(仮名)が John Wells さんへ出すメールなのですが……
Dear Mr. John Wells,
Hello!   I’m Taro Yamada of ABC Corporation.
これを書いた受講生さんは、会話セッションでは働き方改革のことを英語でロジカルに論じてみせる実力の持ち主。それだけに、いかにも惜しいご作法違反がいくつかあります。

メールには会話文とは別のご作法がある

冒頭の Hello!  に、のけぞったかたも多いかも。ビジネスメールの冒頭、すでに Dear ナントカさん、と呼びかけたあとに Hello! は、おかしいです。電話じゃないんですから。
I’m Taro Yamada. . .  と、短縮形を使っているのも、初めてメールを送る相手に対していかにもなれなれしくて違和感あり。書くとすれば
My name is Taro Yamada, working for ABC Corporation.
といった書きぶりにすれば、すっと受け入れてもらえます。

フルネームの呼びかけは大げさすぎる

Dear Mr. John Wells,
とフルネームで呼びかけているのも、ネイティブ話者をドキッとさせます。
ひとにフルネームで呼びかける典型的なシチュエーションは、親が子供を叱るときなんですね。あるいは重大な告白など、ものすごく改まったときです。
日頃は Hey, Johnny! とか呼ばれているのに、とつぜん John Wells! と呼びかけられるとしたら、それって親が 「Wells 家の John よ、しっかりしなさい」と小言を言うときなのです。あるいは「じつはあなたのほんとのお父さんはネ……」という告白かもしれません(笑)
とにかく
Dear Mr. Wells,
で十分です。

呼びかけのあとは、コンマかコロンか

Dear Mr. Wells:
のように、コロン(:)をつけるのがルールだ! と決めつけるひとがいますが、ここはコロンでもコンマでも句読点なしでもOKです。個人差もありますが
Dear Mr. Wells: (コロンはおもにアメリカ英語)
Dear Mr Wells, (コンマはおもにイギリス英語)
Dear Mr Wells  (句読点なしは、おもにイギリス英語)
といったところでしょう。ちなみに Mister の略語は Mr. Wells のようにピリオドをつけるのがアメリカ英語、Mr Wells のようにピリオドなしで書くのがイギリス英語です(あくまで、そういう傾向ですよ、ということですが)。

和文の習慣を英文メールに持ち込まない

さすがに今どき、英文メールを日本式の「時候の挨拶」で始めるひとはいないでしょう。そもそも手紙を書く習慣が急速にすたれ、「灯火親しむ秋となりました」みたいな表現を使える日本人じたい、少数派になってしまった。
え? 英語で「灯火親しむ秋となりました」って言ってみろですって?
強いて格調高く訳せば There has arrived the autumnal season when you would find pleasure in reading by the desk lamp. みたいなことになりますが(笑)

「初めてお手紙を差し上げます」は英文メールでは不要

英文メール添削では、多くの受講生さんが冒頭にこういう文を入れたがります。
This is the first time that I send an e-mail to you.
文法的には100%正しい英語ですが、読み手は一読して「それがどうした?」と思ってしまいます。
日本人の感覚としては「初めてメールを差し上げます」という決まり文句の挨拶でしょう。でも英文の感覚としては「わたしがあなたにメールを送るのは、今回が初めてなんですよ」と言っているわけです。まさに「それがどうした?」だと思いませんか。
日本語の手紙文化はさまざまな決まり文句や形式を育ててきました。それが日本のメール文化にも持ち込まれているわけですが、それを英語に持ち込まないことです。

いきなり自己紹介を始める身勝手

それとともに多いのが、いきなり自己紹介を延々と展開するパターンです。
This is the first time that I send an e-mail to you.  Let me introduce our company, an apparel producer and marketer established in 1998.  We are. . .
(初めてメールを差し上げます。わたくしどもは1998年設立のアパレルメーカーでございまして……)
この展開は和文の世界では自然です。まず自己紹介からというのは自然な流れです。
しかし和文の習慣を英文に持ち込むと悲劇。いきなりの自己紹介が3行、4行と続こうものなら、メールは即、ゴミ箱行きです。
英文の世界では、読み手側はこう受け取ります。
「なんで、あなたの自己紹介にわたしがお付き合いしなきゃいけないわけ? 何が目的でメールを書いてきたの? まずそれを言ってくれよ」
目的が示されないまま、いきなり自己紹介が展開されると、読み手のイライラ度は急上昇です。

英文メールではメールの目的を単刀直入に書こう

和文の世界では、いきなり用件を話すのは下品とされます。古風な手紙では「用件は最後の段落に書いてあった」なんてことも、まれではない。ビジネストークでも、まずは他愛のない話をしながら用件に移っていくものです。
英語でも「まず small talk から始める」というのはビジネストークの作法のひとつです。
しかし、初めてメールを送る相手に対しては、small talk は不要です。「なんで俺がおまえの small talk に付き合わなきゃいけないんだよ?」とばかりに相手をイラつかせ、メールはゴミ箱行きです。
ドライに考えましょう。メールの冒頭に、いきなり用件を簡潔にまとめて書きましょう。何のためのメールか分かれば、相手は次を読む気になります。

メール冒頭で用件を伝える定型表現

こんな表現を使うとよいでしょう。
I am writing to you to request your cooperation for . . .
「このメールを書いているのは 〇〇〇 にお力添えをお願いするためです」と、いともあっさり書くのです。
たとえばアパレルメーカーが新規市場でマーケティングをしたいなら
I am writing to you to request your cooperation for marketing our apparel products in your country.
(わたしがメールを差し上げるのは、弊社のアパレル製品を貴国で販売すべくお力添えをいただきたいからです。)

丁寧さを加えていくテクニック

もう少しへりくだった丁寧表現がしたいな。もちろん、英語でも可能です。
I am writing to you to discuss any possibilities of your cooperation with us for marketing our apparel products in your country.
(わたしがメールを差し上げるのは、弊社のアパレル製品を貴国で販売すべくお力添えをいただけないか、ご相談したいからです。)
この表現のカギは any possibilities というところ。「なんでもいいから、何か可能性があれば……」という、ひたむきさが感じられますね。

さらに へりくだってみる

もうひと声! こう書いてみたらどうでしょう。
I am writing to you with a wish to discuss any possibilities of your cooperation with us for marketing our apparel products in your country.
(わたしがメールを差し上げるのは、弊社のアパレル製品を貴国で販売すべくお力添えをいただけないか、ご相談できないかなと考えたからです。)
さらに a wish というキーワードが加わりました。「実現できないかもしれない願望」です。これも「何とかしたいんです!」というあなたの思いを伝えてくれる一言です。
用件を伝えて、それが相手に刺されば、あとは少々ヘタな英文でも相手はついてきてくれます。あとはマイペースで思いのたけを英語で表現していきましょう。

まとめ

新たなビジネス展開に欠かせない、新規の関係先への英文メール。
冒頭の数行で関門を突破すれば、相手にきっと読んでもらえますよ。
・英文メールのご作法を守る
・日本的な挨拶表現の発想を持ち込まない
・まず用件を簡潔にまとめて書く
これを守れば、あなたのビジネスメールは相手の心に刺さるはずです。お仕事に、きっと良い展開がありますよ。

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